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臆病退治の妙薬 |
法華経という教えは、仏教の中でも一番よい教えだというが、一体どういう点が優れているかというと、「一切衆生皆是吾子」(一切の人々はみな吾が子なり。イッサイシュジョウ カイゼゴシ)と説いて、すべてのものを見るのに、「親の心」で見よとお釈迦さまが仰せになっている点で、こういう考えを一つ持つだけでも、一切すべてが都合よくなる。
すべてのものを見るのに、先ず自分の子供だと思って見ると、嫌いなものも嫌いでなくなり、他人を見るにも大変に懐しい人に見えてきて、世の中へ出ても、人を恐がり世間を恐がっていた臆病な気持ちも素ッ飛んでしまい、個人主義だ、社会主義意だという争いも、一ぺんに解決してしまう。
たとえば、猫のようなものにしても、人間を見ると恐がって逃げてしまうけれども、一たび子供を持ったとなると、恐がるどころでない。その子供に触れようものなら、「ウーファッ」と向って来る。畜生でさえ子供を持って親という考えになった時は強くなるのである。況んやして人間が親心になった時には、大きな力が出て来る事はいうまでもない。
法華経の教えは、その点に最も優れていて、殊にこれを日蓮聖人は、「日蓮は、日本国の父母なり」と強く仰せられた。そこから、あの偉大な力と、日本国の思想を導かんとするご主張が出たのである。
臆病を退治する妙薬は、親心になることが一番である。 |
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