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三福田 |
田ん圃は、そこに種をまいて稲を実らせ、おいしいお米をつくりだす土壌ですが、仏教では、人が本当に幸福になるためには、三つの田ん圃を大切に育てなければならないと教えています。それが「三福田(さんふくでん)」という教えです。その第一は「敬田(きょうでん)」、第二は「恩田(おんでん)」、第三が「悲田(ひでん)」です。この「敬田、恩田、悲田」の三つの田ん圃を大事に育てていくことが、本当の幸福を生みだすことにつながっていくと教えるわけです。
第一の「敬田」は、直接には仏を敬い、仏の教えを敬い、またその教えを弘める人を敬うということ、つまり「仏法僧」の三宝を敬うということですが、「敬う心」を大切にしていくということは、心を石のように頑固にして、いつも額にシワを寄せているということではなく、心を開いて、いいものやためになる教えを「なるほど」とうなずいて素直に学んで吸収していく、そんな心を大切にしていくということです。いいかえれば「柔軟心」ですね。
第二は「恩田」ですが、これは特に父と母の恩に報いることが大事だと教えます。両親のおかげで今の自分がここにあるんだということを「ありがたい」と思う心、つまり自分に対する謙虚な心を大事に育てていかなければならないというのです。
そして第三の「悲田」ですが、これは人の苦しみや悲しみのわかる、思いやりの心を育てなさいということです。前にテレビ番組で、お母さん方に「自分の子供をどのような子供に育てたいと思いますか」というインタビューをやっていたことがありますが、あるお母さんが「もし前を歩いているおばあさんが何かにつまずいてころんだとしたら、すぐに飛んでいって大丈夫?とおこしてあげるような、そんな子供に育てたい」と語っていました。「悲田」とは、そのような思いやりの心を大事にしなさいという教えです。
さて、この「敬田、恩田、悲田」という「三福田」は、他でもない、我々みんなの田ん圃です。誰もが心の中に持っている三つの田ん圃なんです。そこにいい種をまいて、大事に育てていきたいものですね。 |
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