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父母の恩 |
今、「親孝行を」というと、なんだか古めかしい苔の生えた言葉のように聞こえてきます。「親の恩は山よりも高く、海よりも深い」と子供に言ったら、「山よりも高いって、海抜どのくらいですか」と訊き返されたという笑い話もあります。
しかしどんなすぐれたコンピュータでも計算不可能なもの、計算できないものが「子を思う親の心」です。『父母(ぶも)恩重経』というお経では、十種類の父母の恩ということを私たちに語っています。親に孝行をしなさい、と人から言われる前に、人から言われるのを嫌う前に、その言葉を味わってみたいと思います。
一、母の胎内で育てられた恩
お母さんのお腹の中で十ヶ月の間、生命を育んでくださった恩。
二、出産の痛み(陣痛)をガマンしてくださった恩
お産の苦しみは、もう二度と子供を産みたくないと思うほどの激しいものだといいます。
三、生まれたことを喜んでくださった恩
そして無事誕生。女の子の「ひなまつり」、男の子の「鯉のぼり」にその悦びがあふれています。
四、おっぱいをたくさんくださった恩
大きく健康に育てという親の思いですね。
五、おねしょの布団に寝てくださった恩
六、おむつを洗ってくださった恩
お尻のよごれを、いつもきれいにしてくれた恩です。
七、食べ物を噛んで与えてくださった恩
八、いろいろとかばって守ってくれた恩
九、いつも心配してくれた恩
十、子供の悲しみを、子供以上に共に悲しんでくれた恩。
「親が勝手に生んだんだ」と言う人がもしいたとしたら、親も不幸ですし、そう語った本人もまた不幸ですね。
仏教では第一に親をいたわり、第二に親に心配をかけず、第三に親を喜ばせよと説きます。
日蓮聖人は「孝とは高なり。天高(てんたか)けれども、孝よりも高からず」と示されました。また「父母の孝養、心にたらず」とも述懐されて、孝の大切さをつづられました。 |
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