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「ぼたもち」と「おはぎ」 |
お彼岸にはおいしい「ぼたもち」をつくって仏さまにお供えしますが、同じ「ぼたもち」でも秋のお彼岸にお供えするときは「おはぎ」といいます。これは、春は牡丹の花が咲くころなので「ぼたもち」、秋は萩の花が咲くころなので「おはぎ」というようになったんですね。
ではどうして「ぼたもち」をつくって、仏さまにお供えするようになったのでしょうか。現代人にはもう理解しにくいことかもしれませんが、昔は白米といえば最高のご馳走だったんですね。その白米に、これも大切なモチ米をまぜておいしく炊きあげておもちをつくり、貴重な小豆(あずき)と、これもとくに貴重品で手に入りにくかった大事な大事な砂糖をまぜてつくった“あん”でくるんだ「ぼたもち」。それは昔の人たちにとって特別のごちそうだったのです。
そのような最高のごちそうを、心をこめて仏さまにお供えし、家族の者がそろってそれをいただく…。そこに、昔の人のつつましい祈りの気持ちが込められていたのです。しかも大事なのは、そのご馳走を自分たちだけでいただかずに、かならず隣近所の人たちにも配って、みんなに食べてもらったことです。他に施す無償の行為を、仏教では「布施」といって大事な修行のひとつとしていますが、昔の人たちは、「ぼたもち」をつくってみんなに食べてもらうことによって、「お布施」という仏教の大切な教えをごく自然に、身をもって実行していたわけです。
しかし、そんな理屈はともかくとして、「ぼたもち」は今でもおいしいものですね…。 |
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