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心の財(たから)第一なり |
日蓮聖人は「蔵の財(たから)よりも身の財すぐれたり。身の財より心の財第一なり」とおっしゃられました。人間には三つの財(たから)があるというのです。第一は「蔵の財」これは財産とかお金のことで、生活していくためになくてはならないものです。第二は「身の財」。これは身体の健康のことです。健康だからこそ十分に働くこともできるのです。そして第三が「心の財」。心の健康のことです。心が曲がるとその行いもふるまいも邪(よこしま)なものとなります。
日蓮聖人はこの三つの財について、「蔵の財」よりも「身の財」がすぐれ、さらにその「身の財」よりも「心の財」こそが第一なのである、と教えられました。
イソップ物語の中に「ぶどうばたけのたからもの」という有名な話があります。
ある農家にたいへん働き者のお父さんがいて、よく働くので田や畑はもちろん、広いブドウ畑ももっていました。ところが、彼にはたくさんの息子がいるんですが、どの息子も毎日のらりくらりと遊んでばかりいるなまけ者で、ちっともまじめに働こうとしません。お父さんは歳をとるにつれてそれが心配で、何とか働きものになってもらいたいと考えていました。そこで、とうとう重い病気にかかってもうダメだというときに、息子たちを枕元に呼び集めて言いました。
「わしももうながくは生きられないと思うから、お前たちに大事なことを知らせておく。それは宝物のことだ」。「え、たからものですか」、息子たちは身をのりだしてきました。「そうだ。実は、あのブドウ畑に大事な宝物をかくしてある。わしが死んだらお前たちで、ゆっくり掘りだしてごらん」。こういい残してお父さんはまもなく亡くなりました。
息子たちはさっそくブドウ畑を隅から隅まで掘り返していきました。しかし、いくら掘っても、いくら探しても宝物は見つかりません。息子たちはそれでもあきらめずに、毎日毎日ブドウ畑を掘り返しました。そのためにブドウ畑には草もはえず、畑の土はいつもやわらかくなっていました。そのうちに秋になり、ブドウ棚には見事なブドウがなり、日がたつにつれて、ブドウの房はますます大きく垂れ下がってきました。息子たちは、お父さんの言った宝物の意味をはじめてさとりました。
こういう物語です。「蔵の財」「身の財」「心の財」、あなたはこの三つの財をどう考えますか。 |
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