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観世音菩薩 |
観音さまというと、東京浅草の「観音さま」が有名です。この「観音さま」というのは略式の名前」、つまり親しく身近な気持をこめて呼ぶ愛称ですが、そのフルネーム、正式の名前は「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」といい、『法華経』の第二十五章、「観世音菩薩普門品(ふもんぼん)」に説かれている菩薩さまのことです。
世間の人々が「助けてほしい」と救いの声(音)をあげると、その声を聞いて、ただちにその人の救済にかけつける。しかも救いを求める人々に応じて、様々な姿となって救いの手をさしのべる菩薩さまです。つまり人々を救うために、身を自在に変えることができるのが観音さまなのです。しかも、人々が苦しみに打ちひしがれながらも観世音菩薩の御名(みな)を聞き、その御名を一心に唱えれば、観世音菩薩はその彼らの音声(おんじょう)を観じて苦しみから解き放ってくれるとされています。
『法華経』にはこう説かれています。
「観世音菩薩は、救う相手にふさわしい形をとって、この世に現われます。あるときには神々の姿となり、あるときには修行僧や尼僧になり、あるときには女性にも子供にもなって現われるのです。また王や長者や司祭になることもあります。さらには人間以外の動物や鬼(霊)などの姿にもなって現われます。相手を最も救済しやすい形をとって現われるからです。もしかすると、あなたの隣にいる人が観世音菩薩かもしれないのですよ」と。
観世音菩薩が鬼の姿にもなって救済するというのはすごいですね。自分に危害を加えたり、悪口をいったり足を引っ張ったりする人を、私たちは嫌うのが自然です。つきあうのもいやだ、顔を見るのもいやだと思ってしまいます。しかしもしそれをも、観音さんが姿を変えて私たちを救おうとしている振舞なんだ、と思えるとしたら、いつまでもその人を憎んでいる自分の心を変えさせる道に、一歩踏みだしたことになるのではないでしょうか。「怨(うら)みは水に流せ、恩は石にきざめ」という言葉もあります。
『法華経』には、そういうことも説かれているのです。 |
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