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| 善根とは |
仏教に「善根（ぜんごん）」という言葉があります。善悪の「善」という字に根っ子の「根」という字を書きます。「ぜんこん」とも読みますが、仏教では「ぜんごん」といっています。これは「善」を木の「根」にたとえたもので、「根」があればこそその木は花や果実をつけることができるわけですから、「根」が、花や果実をつけるもとであるのと同じように、「善」はよい果報をもたらすもとであるという意味です。
三つの善根「三善根」というのは、「無貪（むとん：むさぼらないこと）」、「無瞋（むしん：いからないこと）」、「無癡（むち：おろかでないこと）」の三つをいいます。
日蓮聖人はこの「善根」ということにふれて、身延山から信徒の一人「窪尼御前（くぼあまごぜん）」に対して、次のような手紙のご返事を与えておられます。
「善根というのは、大きいからよいとか、小さいから悪いとか、一概に決められるものではなくて、国により、人により、時により、さまざまに変化するものです。……たとえば生きものを殺したり盗みをしたりして得た金品を奉納して、功徳善根を積んだつもりになっても、それはかえって悪業となります……。また戦争で手柄をたてて領地をもらったり、あるいは理由もなく人々を苦しめて蓄えたりしたもので善根功徳を施しても、これらは一見大いなる仏事に見えますが、根元が不浄なのですから、本人が成仏しないばかりか、その人々の子孫も絶えてしまうような事になるのです。また自分の心も正直で、みずから精進して善根功徳を施しても成仏しないこともあります。たとえば、良い種を悪い田に植えてしまったら種が無駄になるばかりでなく、大きな損害を受けてしまうのと同じです。……ところで、あなたのご供養は、至らないこの日蓮を供養しているのではありません。あなたのご供養は法華経に対するものですから、その功徳は釈迦牟尼仏や多宝如来や、その他十方の諸仏がお取り計らいくださいます。そちらにお任せ申し上げればよいのです……」（定一八九九、私訳）
このように日蓮聖人は、他人の苦しみや痛みや犠牲の上に立った、根元が不浄な善根は真の善根功徳とはなり得ない、と厳しくさとされています。つまり、自己の欲求から解放された善根（法華経への善根功徳）こそ求めるべきものであるとして、「仏にこの功徳をまかせまいらせ候」（同前）と仰せられたのでした。まことの善根とは、むつかしく厳しく、しかも大切なものなのですね。 |
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